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訪問看護ステーションを開業するときの流れは?必要な準備を解説

皆さんもご存知のように、日本は世界に類を見ない超高齢社会に突入しています。
その対策の一つとして掲げられている地域包括ケアシステムの実現のためにも、訪問看護の存在は必要不可欠です。
実際に一般社団法人全国訪問看護事業協会による2022年の調査では、2012年に6,298件だった訪問看護ステーションの数が2022年には1万4,304件と10年の間に倍以上になっており、その需要の高さがうかがえます。厚生労働省による試算では2025年には12万人の訪問看護師が必要になると予測されており、この需要は今後も継続していくものと考えられます。

引用:一般社団法人全国訪問看護事業協会「令和4年度 訪問看護ステーション数 調査結果」

開業の目的・方針を考える

訪問看護への需要が増加する一方で考慮しなければならないのが、1年間に廃止・休止されている訪問看護ステーションの数です。

同じく2022年の一般社団法人全国訪問看護事業協会の調査では、1,806件が新たに開設している一方、廃止が490件、休止が242件となっており、合わせると実に新規開設件数の4割以上に相当します。

需要の高まりとともにステーションの数が増加するということは、周囲に競合が増えていくということでもあります。そのため、漠然と「訪看ステーションを開業したい」と考えているだけでは、実際に立ち上げた後に上手く運営できなくなってしまう可能性が高くなります。

具体的な開設手続きに入る前に、「どこで」「どのような患者さんを対象に」「どのようなケアを行う」ステーションを作りたいのか、自分の中で考えていることを明文化しましょう。

開設を検討しているエリアにはニーズがあるのか、競合となり得るステーションや医療機関はどこなのかなど、市場環境を調査することも大切です。

また対象となる患者さんはどのような方で、どのような人材がいるとニーズに沿った対応ができるのかも検討していきましょう。

これらを考えた上で、ここでならステーションを開設してもやっていけそうだ、という意思が固まってはじめて、次のステップに移ることができます。

目的や方針が適切に定まっていない場合、開設してから目的や方針がぶれてしまい、ご利用される患者さんや従事されるスタッフの皆さんが定着しづらくなる可能性もあるので、目的や方針を十分定める時間を設けることが重要です。

法人を設立する

訪問看護ステーションの開業は個人では行うことができません。

また、訪問看護事業者としてサービスの提供を行うには、都道府県もしくは市町村からの指定を受ける必要がありますが、その際にも法人格を保有していることが要件となっています。

そのため、まずは法人設立の手続きをしましょう。

法人格の形式については、どのようなものでも問題ありませんが、株式会社の形式を取っている訪問看護事業者が多いようです。

書類作成から登記の手続きまで自分で行うこともできますが、忙しい人や自信のない人は、税理士や司法書士などの専門家に依頼することも考えてみましょう。

厚生労働省「令和3年介護サービス施設・事業所調査」より作成

 メリット

 デメリット

 株式会社

 信用度が高い

 資金調達がしやすい

 設立時の費用が高め

 合同会社

 設立コストが低い

 信用度・認知度が低い

 NPO法人

 信用度・認知度が高い

 設立までに時間がかかる

 医療法人

 信用度・認知度が高い

 運営・管理が煩雑

開設資金を確保する

無事開業までこぎつけ利用者さんへのサービスを始めることができても、最初の報酬は事業開始から約2か月後。

その間も滞りなく運営できるよう、開設時に最低でも3か月分の資金は確保しておくようにしましょう。

開設資金には大きく以下の2つに分けられます。

  • 運転資金:給与や社会保険など、「人」に関する資金
  • 設備資金:家賃や備品など、「物」に関する資金


どちらも、個人の資産のみでまかなうのはなかなか難しい額です。

そのため資金準備の際は、銀行からの融資、日本政策金融公庫からの融資のほか、自治体からの融資や補助金、助成金なども視野に入れて検討してみましょう。

資金準備にあたり、目標とする金額を調達するためには事業計画をしっかり作成しておくことが重要です。適切な事業計画になっていることで、銀行の担当者の方も安心して融資を通していただくことにつながります。

事業計画を立てる

次は、ステップ1で考えた開業の目的や方針を踏まえ、より具体的に文章化し事業計画書にまとめていきます。

事業計画書は、将来の訪看ステーション経営者となるあなたが今後の見通しを把握するという目的もありますが、ステップ3の開設資金確保の際に銀行からの融資を受ける場合や、自治体への指定申請を行う際にもこの事業計画書の提出が必要となります。

主な記載事項は以下の通りです。

  • 会社の概要
  • 事業の概要
  • 創業の動機
  • 経営者の略歴
  • 事業の内容
  • 従業員数と保有資格
  • これまでの借入の状況
  • 開業資金
  • 資金調達
  • 収支計画


特に資金計画は事業計画書の核となるものですが、一から作るのはとても大変ですよね。
こちらからテンプレートをダウンロードできますので、ぜひご活用ください!

指定申請をする

これまでのステップで触れてきたように、訪問看護ステーションの運営には、都道府県もしくは市町村から訪問看護事業者としての指定を受ける必要があります。

指定を受けるまでの手順は自治体により異なりますが、以下では東京都の場合を例示します。

①新規指定前研修の申し込み(指定月4カ月前末日まで)
新規指定申請を行う予定の事業者は、管理者または法人代表者が東京都福祉保健局の実施する『新規指定前研修』を受けることが要件となります。

②新規指定前研修の受講(原則として指定月3カ月前の15日ごろ)
新規指定前研修は、事業者が運営上順守すべき法律や基準等の必要な知識を深めることを目的として実施されています。

指定申請を行う際の知識以外にも、実際の運営開始後に必要になる知識や情報も得ることができるので、内容はしっかりと把握しておきましょう。

③指定申請(指定月2カ月前15日ごろまでに申請書等を提出)
指定を受けるために必要な申請書および添付書類等を準備して、期日までに東京都福祉財団の窓口に提出します。

必要書類は10以上ありますので、期日までに余裕をもって準備するようにしましょう。

④指定前実地調査・指定内容の確認(指定月前月)
指定申請書およびその他の添付書類に基づき、申請内容に不備がないかの確認が実施されます。

申請書類だけでは指定可否の判断が難しい場合は、東京都福祉財団の職員等が開設予定の事業所を訪問し、指定前実地調査として現地での確認を行うことがあります。

⑤指定通知書発送(指定前月末日まで)
訪問看護事業所としての指定を受けられることが決まると、東京都より指定通知書が発送されます。

指定通知書の受け取り後、記載されている指定年月日から事業を開始することができます。



今回は、新しく訪問看護ステーションを開設する際の基本的なステップをご紹介しました。

なんとなく開設準備のイメージがついたでしょうか?

実際の準備には、ここには書ききれない細かい手順も必要になりますので、新規開設を考えている方は余裕をもって計画的に進めていくように心がけましょう。

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